こんにちは、3歳児の子育て中&視能訓練士のヤス(@yasu)です
視能訓練士(国家資格)として、小児眼科に勤めて17年
斜視や弱視のお子様の検査や矯正訓練に携わる機会が多く、これまでに多くのお子様の検査担当をしてまいりました。
斜視や弱視診療は、早期発見・早期治療が極めて重要な分野です。
斜視や弱視の訓練というのは、短期間で完結するものではなく、一般的には9歳頃までの長期間の視機能管理のことを言います。
これからの時代を生きるお子様の目を育てるという仕事は、非常にやりがいがある反面、大きな責務をまかされることになります。
ただ、眼科に勤めている医師や視能訓練士の中にも、斜視弱視分野に苦手意識のある方はたくさんいます。
そこでこの記事では、小児眼科に務める視能訓練士や眼科医向けに【斜視や弱視が得意になるためのおすすめの教科書】を紹介したいと思います。
医学書は比較的高額なものが多いので、実際どれを読めば良いのかわからずに手を出せずにいる方も多いと思います
もちろん臨床経験値も重要なので、本を読むだけで良い訳ではありませんが、本を読むことで苦手意識が薄れ、実際の臨床へチャレンジしやすくなるのは間違いありません!
知識・技術・経験全てが必要で、決して簡単な分野ではありませんが、その分できるようになってくると『やりがい』と『希望』を強く感じることができますよ!
ぜひ参考にしていただき、この分野に興味のある視能訓練士・眼科医が少しでも多く現れることを願っています♪
国家資格である『視能訓練士』免許を取得し、小児眼科併設の眼科クリニックで現在まで15年勤務
検査主任として小さなお子様の目の検査やメガネ合わせ、弱視・斜視訓練等を主に担当し、視能訓練士実習生の指導員も兼任する
令和元年にパパデビュー♪
仕事とプライベートで子供と接する毎日を過ごしつつ、持ち前の好奇心を生かし、日々新しい発見を探しています!
子供の目に関する役立ち情報(近視、遠視、乱視、弱視、斜視など)はInstagramで紹介しています!
斜視・弱視の基礎から学びたい人向けの本【初心者〜中級者向け】
保存版 斜視・弱視黄金マニュアル
保存版 斜視・弱視 黄金マニュアル 病態、検査、訓練、手術がわかる! (眼科ケア2021年秋季増刊) [ 丸林 彩子 ]は、斜視・弱視診療に携わる初心者の視能訓練士におすすめの1冊です♪
眼科ケアシリーズの増刊号なので、一般的な医学書に比べ、比較的安価に手に入ります
これを読めば斜視・弱視診療の基本的な知識は身に付けることができると思います
斜視や弱視の種類別基礎知識、必要な検査の手順や結果判定のやり方、実際の症例の紹介などが掲載されており、迷ったらとりあえずコレから読むのをおすすめします
オールカラーでまとめられており、本を読むのが苦手な方でも拒否反応は薄いはず(笑)
眼科斜視クオリファイ(22)弱視斜視診療スタンダード
専門医のための眼科診療クオリファイ(22) 弱視・斜視診療のスタンダード [ 不二門尚 ]は少し深めの知識を身につけたいな〜と思い始めた頃におすすめの1冊です
斜視・弱視の基礎的な知識をメインに、斜視手術についても網羅されており、視能訓練士だけではなく、眼科クリニック勤務の医師にも読みやすい内容だと思います
視能学 第3版
視能学 第3版[本/雑誌] / 小林義治/他編集 松岡久美子/他編集は、視能訓練士が臨床で働く上での最低限の知識をすべて網羅している分厚い1冊で、斜視弱視だけではなく、視能訓練士の教科書的な位置づけとされています
学生の時から教科書として使用していることも多いと思います
小児眼科で勤務する上でも、まずはこの本を片手に様々な経験を積むことからスタートされると良いと思います
新篇 眼科プラクティス6 視能訓練士スキルアップ 〜これこそ座右の書〜
視能訓練士スキルアップ -これこそ座右の書ー (新篇眼科プラクティス 6) [ 大鹿哲郎 ]の1冊は斜視弱視分野だけでなく、視能訓練士が必要な知識(眼科一般検査、斜視弱視関連、ロービジョン等)が幅広く網羅されており、新人からベテランまで持っていて損のない1冊です
2022年10月に出版され、近年のトピックス(スマホ内斜視、Sagging eye syndrome、多焦点IOL、近視抑制治療など)についてもまとめられています
斜視弱視分野に関しては、視能矯正の実際として症例を元にまとめられており、症例自体も一目でわかるように簡潔にまとめられており、非常に読みやすい印象です
「不同視弱視と微小斜視弱視の鑑別」「斜視の手術前に必要な検査について」「プリズムアダプテーションテスト」「発達障害児の特性と検査の留意点」「成人の複視への対応」「多焦点眼内レンズの種類」など、視能訓練士もやや苦手意識の強い分野の解説もあるのでおすすめ!
できる!斜視検査 両眼視機能がわかる、ケーススタディでレベルアップ!
『待ってました!』とばかりの分かりやすさです!!
2023年6月15日発行の斜視の検査に特化した医学書です。
斜視と言えば、両眼視機能と切っても切れない関係にありますが、この両眼視機能は奥が深く、なかなか正確に理解するのは難しいですよね。
この本では斜視に関わるあらゆる検査を多くの図や写真を用いてオールカラーでわかりやすくまとめてくれています。
バゴリーニ線条ガラス試験やプリズムアダプテーションテストや大型弱視鏡など、視能訓練士が苦手意識の多い検査についてもしっかりまとめてくれていました。
また、両眼視機能については基礎知識はもちろん、抑制や網膜対応異常について実際の症例付きでまとまっており、視能訓練士新人にもわかりやすい内容になっていると思います。
間欠性外斜視の視能訓練『Flashing method』についても書かれていますよ〜。
微小斜視に対する固視検査や網膜対応異常の検査についても記載があります。
自分は学会会場で買いましたが、一番売れていたと思います!!
ぜひ熟読して、質の高い斜視診療を実現しましょう!
眼科ケア 2021年7月号 症例別斜視・弱視の検査と視能訓練ガイド
眼科ケアシリーズから紹介します♪
眼科ケア2021年7月号 (23巻7号)には斜視・弱視の臨床でやや迷う症例に対しての実際の検査や訓練方法が載っています
プリズム処方や間欠性外斜視の訓練の実際についても詳しめにまとめられており、ある程度検査に慣れてきた頃に読むのがおすすめです♪
安価なので嬉しいですね♪
斜視・弱視を極めたい人向けの本【ベテラン向け】
視能訓練学 第2版 (視能学エキスパート)
視能訓練学 第2版 (視能学エキスパート) [ 公益社団法人 日本視能訓練士協会 ]は完全に視能訓練士向けの本です
斜視や弱視の訓練については、この本1冊あれば事足りるぐらいのボリュームです!
視覚の発達のこと、そして視覚の入力系、統合系、出力系に分けた検査・訓練の行い方を実際の症例を元にかなり詳しくまとめられています
内容的には初心者だと難しめの内容になっているので、斜視や弱視の基礎知識がある程度備わってから読むことをおすすめします
この本を読み切きれば、「視能訓練士」という名前に負けないくらい視能訓練への自信が付くと思います
斜視治療のストラテジー 症例検討で学ぶエキスパートの思考と対処法
臨床の場には、診断が困難な斜視や眼球運動障害の患者様も多く来院されます
斜視・弱視外来の視能訓練士は経験があると思いますが、眼位や眼球運動の検査をしていて「この動き何??」みたいな症例に出会うことも少なくないと思います
斜視治療のストラテジー 症例検討で学ぶエキスパートの思考と対処法[本/雑誌] / 佐藤美保/編には、そんな少し頭を悩ませるような斜視症例が53例書かれており、鑑別に必要な検査、治療方針、保護者への説明の仕方、治療結果など臨床の流れに沿って学ぶことができます
また、それぞれの症例のポイントやエキスパートからのアドバイスも書かれていてとても参考になりました
小児の弱視と視機能発達
小児の弱視と視機能発達 [ 三木淳司 ]は、2020年に出版された新しい弱視の教科書で、弱視のことだけで350ページ以上に及びます
近年の研究結果やエビデンスを元に、弱視の病態や検査、治療法がまとめられています
斜視・弱視診療に携わるベテラン視能訓練士は非常に読みがいのある内容になっており、今ある知識の再確認と新たな気づきが得られると思います
基礎知識とある程度の臨床経験がないとやや難しく感じる可能性はあります
両眼視機能についてのおすすめ本
すぐに役立つ眼科診療の知識 【両眼視】
両眼視機能についてだけで、ここまで詳しく書かれた本は正直この本『すぐに役立つ眼科診療の知識|両眼視 』ぐらいじゃないかなと思います
両眼視の発達をはじめに、両眼視機能検査のコツ、斜視や弱視のタイプ別の両眼視機能、さらには両眼視機能を考慮した光学的治療のコツなどが書かれています
やや古い本にはなりますが、現在でも通用する両眼視機能の基本から応用までを幅広く学ぶことができると思います
内容は上級者向けになるため、ある程度の基礎知識と経験を積んでから読まれることをおすすめします
眼鏡処方についてのおすすめ本
眼科診療クオリファイ(1)屈折異常と眼鏡矯正
斜視・弱視診療に携わる視能訓練士が絶対に身につけておかなければいけない技術が眼鏡処方です
弱視治療の基本は眼鏡です
処方度数の決め方やレンズの光学的特性など学ぶべきことはたくさんあり、まずは専門医のための眼科診療クオリファイ(1) 屈折異常と眼鏡矯正 [ 大鹿哲郎 ]を読めば、眼鏡処方のための基礎知識を身につけることができると思います
光学・眼鏡 第2版 視能学エキスパート
2023年2月に第2版として最新情報にアップデート!
より実践に即した内容になっています!
光学・眼鏡 第2版 (視能学エキスパート) [ 公益社団法人 日本視能訓練士協会 ]は眼鏡のことだけでなく、眼光学についてもまとめられているのが特徴です
光の性質やレンズの作用、屈折異常の詳細、眼球の光学特性など基礎から応用までかなり詳しく載っています
眼鏡処方については、疾患別にまとめられているのもgood♪
眼鏡のレンズ素材やフレームについて、また眼鏡フィッティングについても詳しく知ることができ、視能訓練士から視能訓練学生、眼科医まで眼鏡の教科書的な1冊になっています
眼科ケア 2022年秋季増刊 眼鏡処方おたすけ帖
眼鏡処方おたすけ帖 めがね忍者が教える!眼鏡合わせの基本&応用 (眼科ケア2022年秋季増刊) [ 関戸 昌諭 ]は、2022年10月に出版された眼科ケア増刊号で、1冊まるまる眼鏡処方についてまとめられた個人的には【イチオシ】の本です!
自分が読んだ眼鏡処方に特化した本の中で1番読みやすく、臨床で必要な知識が網羅されています
患者さんの訴えやよくある疾患別に眼鏡処方の仕方が症例付き(初心者、中級者、上級者別)でまとめられています
例えば「歪んで見える」「二重に見える」「肩が凝る」「頭痛がする」「まぶしい」など臨床の中でよくある訴えから、どのように度数の調整をすれば良いのか、眼鏡店へどのように指示すれば良いか(←これはかなり嬉しい)など、かなり具体的に解説してくれています
また、他の本にはなかなか載っていない眼鏡の知識(下記)も身につけることができるのも魅力の1つ!
- 眼鏡フィッティングについても分かり易い解説がある
- 遠近累進屈折力レンズは勿論、中近・近々両用レンズの構造まで詳しく解説されている本は稀
- 羞明に対しての対策例が豊富→遮光レンズ、ハイコントラストカラーレンズ、調光レンズ、偏光レンズ、ブルーライトカットレンズなど
- 軸上色収差と倍率色収差の具体的な求め方を載せている本は珍しい
- ゴーストとフレアの違いについても言及されている
さらに!適切なフレームサイズ、屈折率とアッべ数と比重の関係、レンズの厚み、見かけの調節力、合成プリズム、収差、水中ゴーグル処方、レンズコーティングなど、視能訓練士も苦手な人が多いであろう分野についても解説があるので非常にありがたい!
4,000円台で、このボリュームは買って損なし!
近視についてのおすすめ本
【クリニックではじめる】学童の近視抑制治療 最新エビデンスとエキスパートから学ぶ実用メソッド
近視分野ではクリニックではじめる 学童の近視抑制治療 最新エビデンスとエキスパートから学ぶ実用メソッド [ 平岡孝浩 ]がおすすめです!
2021年5月発行で、多くのエビデンスを元にクリニックでできる近視抑制治療について、詳しくまとめられています
主に現在の3大近視抑制治療であるオルソケラトロジー、低濃度アトロピン、多焦点ソフトコンタクトについての効果や適応、注意点などが書かれています
また、屋外活動やサプリメントによる近視抑制効果などについても触れています
スマホの影響がどれくらいあるかなど、誰もが気になる疑問もQ&A方式でわかりやすくまとめられていました
『小児の近視』 第2版 診断と治療
小児の近視第2版 診断と治療 [ 日本近視学会 ]は2023年10月出版です。
『診断と治療』という本のタイトルにもあるように、
『診断』に関しては、近視診断に必要な検査のコツ、小児屈折検査のコツ、調節緊張(仮性近視)と近視の鑑別方法等
そして『治療』に関しては、眼鏡処方の度数の決め方(完全矯正か低矯正)やケーススタディ、話題のオルソケラトロジーや多焦点コンタクトレンズ、低濃度アトロピン等の近視進行抑制治療の実際等が多くのエビデンスを元に解説されています。
その他にも小児の近視の環境因子(近業との関連、パソコンやスマホとの関連、屋外活動ジ時間との関連)についての考え方なども詳細に書かれています。
近視治療に積極的なクリニックや医療従事者にはぜひ手にとって読んでほしい1冊です!
また、医療従事者だけでなく、お子様の近視進行抑制治療に興味のある一般の方にもおすすめです!
『近視について詳しく理解したい!』
『近視進行抑制のエビデンスがどの程度あるのか知って子どもの治療を選択したい!』
という親御様はぜひ読んでみてください!!
神経眼科についてのおすすめ本
神経眼科学を学ぶ人のために 第3版
斜視外来に勤務する視能訓練士は、神経眼科的な知識も必要になります
神経眼科学を学ぶ人のために 第3版 [ 三村 治 ]にはかなり多くの疾患の詳細が網羅されており、2021年に第3版が出版されたこともあり、比較的新しい疾患概念にも対応しています
なかなかこれらの知識を全て頭に詰め込むのは困難なので、この本があれば、急な症例が来た時には安心です!
斜視・弱視外来で活躍するポケットブック
小児眼科・弱視斜視外来ノート
ポイントマスター!小児眼科・弱視斜視外来ノート [ 浜松医科大学 ]には、必要最低限の知識がコンパクトにまとまっています
手帳サイズでポケットにも入るサイズで、忙しい斜視・弱視外来の中でもさっと取り出して読むことができます
内容としては初心者向けになります
最後に 〜斜視・弱視を極めればAIには負けない!〜
この斜視・弱視分野は視能訓練士の中でも苦手意識の高い方が多い印象です
苦手な理由としては…
- 子供の対応が苦手
- 子供の検査が難しい
- 自信がない
- 責任が大きい
- 検査項目が多く、治療計画の立て方がわからない
- 指導してくれる視能訓練士がいない
といったところでしょうか
逃げて通ろうと思えばそれも可能です
なぜなら斜視・弱視の診療をほとんど行っていないクリニックや病院も多く、そこに就職(転職)すれば良いだけです
でもこの分野を極めるメリットは大きいと自分は考えています
器械がどんどん進化し、眼科領域の検査機器も以前に比べ、非常に操作しやすく、かつ精度もかなり上がってきています
眼科の器械は法律上、視能訓練士でなくても使用が認められているため、さらに器械が進化して誰でも簡単に操作できる時代が来ると、視能訓練士の価値が下がりかねません
そんな中にあっても、この斜視・弱視診療に関しては器械に奪われることはまずないと思います
子供の検査をうまく行うためには、子供と面と向き合いながらの状況判断が必要不可欠で、上手な声かけと、それに連動させた迅速な検査テクニックが必要になるためです
人と人の感情が通い合い、信頼関係を築くことで成り立つ診療がこの斜視・弱視訓練というわけやな!
【視能訓練士】という名前に恥じないように、「視能訓練に関しては自分に任せて!」と言い続けていけるように、医療の進歩に合わせて日々学び続けていく所存です!
以上、参考になれば幸いです
最後まで読んでいただき、ありがとうございました